求めていた本… なんだけど

新年あけましておめでとうございます。
今年も当ブログをよろしくお願いします。



「去年は沢山の本を読みました」
と先月のブログで書きました。
が、そこで紹介しなかった本が結構あります。
それはいわゆる「架空戦記」もの。
「太平洋戦争で、もしも連合艦隊がこう戦っていたら」
という類の本です。
今まで敬遠していたそのジャンルを、去年何冊か読みました。
なんでその感想を書かないのかというと…

自分の肌に合った作品がなかった

から。


どれを読んでも戦術や戦略や戦闘や兵器の描写ばかり。
「いや、架空戦記だから当然だろう」
と言われればそうですが。
でも私が小説に求めるのは常にキャラクター。
登場人物が生き生きと描かれている小説じゃないとイヤなのです。

そんな、自分が求めていた架空戦記ものに、先日ようやく出会えました。
そんなわけで今年初めて買った本を紹介します。




18010201.jpg
『山本五十子の決断』
如月真弘


なんか架空戦記というよりラノベだし!

しかしこの本、架空戦記の肝である史実考証はばっちり!
(嘘も書いてますが、作者さんはわかった上で書いている)
それだけではなく、
「戦争の描写は丁寧でも、他の部分が…」
という、この手のジャンルの本にありがちな甘えがありません。その時代の空気感までもばっちり描いています。
そのうえ何より、キャラが魅力的。
(ラノベだから当然そうあるべきですが)

私は思いました。
「自分の求めていた小説はこれだ!」



しかしですね。
私はこの本を素直に褒めることができません。
「買え!」
のひとことにためらいを感じます。
それはこの本が面白くないからではありません。

私はこの本をネットで知りました。
「小説家になろう」というサイトにいけば、これが読めます。
正確には、この本の元になった同名の小説が。
それを読んだ時は鳥肌が立ちました。
それほど凄いと思った小説なのに、文庫本になったらその凄味が薄まっている。
ラノベのお約束を無理やり詰め込まされたといえばいいのか。
全体的にマイルドでありきたりのラノベになってしまってる。
(ネット版ではお色気シーンはほぼ皆無なのに、文庫本では「ボインにタッチ!」みたいな描写が入ってたり)

「これが商品化の弊害か」

などと苦々しく思いながら読みました。
それでもじゅうぶん面白いんですけど。
でもそんなわけで素直にお勧めはできません。


私の話が気になる方は、とにかくネット版を読んでみてくださいな。凄いから!


読みまくった一年

小中学生の頃は小説を読みまくったものですが、今年はその記録を塗り替えるのでは、というハイペースでいろいろ読んでます。
思い出せる限り、今年読んだ本を列挙していきます。



・「英国海軍の雄 ジャック・オーブリー」シリーズ
 P.オブライアン著

去年この本を知り、今年も読み続けています。
全20冊は既に本棚に揃えていますが、もったいなくてまだ全部は読めない。そのくらい面白いです。
かっこよくて勇ましくて、英国ならではのユーモアにも富んでいて、とにかく娯楽小説としての全てが詰まった極上の逸品です。
電車の中で何度こらえきれずに笑ったことか。



・「海の覇者トマス・キッド」シリーズ
J.ストックウィン 著

ジャック・オーブリーシリーズに感銘を受けて同様の海洋冒険小説を買い求めた、その中のひとつがこれ。
この手の主人公が大抵貴族出身で出世コースを歩んでいるのに対し、この本の主人公キッドは一番下っぱ、強制徴募で連れてこられた陸者。
(強制徴募とは当時のイギリス海軍が人手不足のために行った合法的な人さらい)
その新米水兵キッドが自分の才覚で運を掴み取り上り詰めていく話です。
作者はこのシリーズがデビュー作。確かに当初は話のつくりがぎこちなく都合のいいストーリー展開もありますが、巻を重ねるごとに話に円熟味が増していく。そういう意味では主人公だけでなく作者の成長をも楽しめる小説です。
作者は現在も最新作を執筆中との事。今後のキッドの活躍が楽しみです。



・「海の男 ホーンブロワー」シリーズ
C.S.フォレスター 著

そうした一連の海洋冒険小説の草分けといえるのがこの「ホーンブロワー」。
チャーチルをはじめ多くの著名人から愛された作品だそうです。

まだ2巻しか読んでませんが、正直上記2作ほどの魅力は感じません。
特にキャラクターの魅力という点で、主人公が優等生すぎ、ユーモアに乏しい。
だけでなく文体そのものも翻訳が固いというかこなれてない気もします。下手とかではなく、当時未知のジャンルだった小説を手探りで訳しているという感じ。
そういう意味で、これと「J.オーブリー」「トマスキッド」を読み比べると、このジャンルの進化や熟成といったものを感じられます。
こんな言い方をしましたが、もちろんこの本も魅力に満ちています。作者が生きていないはずの時代をまるで見てきたように詳細に描く。このジャンルに共通するそんな魅力は、この作品があったからこそ次世代の作品に受け継がれたのでしょう。


そんなわけで19世紀初頭のイギリス海軍事情にやたら詳しくなってしまいました。
そしてつくづく思いました。
「イギリス海軍、鬼畜やな!」

この時代よりもっと遡った本当の海賊の時代の話も読んでみたいのですが、まだいい本を見つけられません。




・「ハムレット」「テンペスト」「真夏の夜の夢」
シェイクスピア 著

それまで苦手だったシェイクスピアを去年「マクベス」で初めて面白いと思い、今年は頑張って何冊か読みました。
「マクベス」の木下順二の訳が好みだったのですが、今年読んだのは別の人の翻訳です。
「マクベス」を含めいずれの作品にも共通しているのが、あきれるほどのセリフのセンスの良さ。
しかしストーリーは、う~ん。
「ハムレット」は面白いと思えましたが、あとの2つは、なんだか言葉遊びを楽しんでるだけの作品という気もします。
自分がまだシェイクスピアの魅力に気づいてないだけかもしれませんが、気づける日は来るのか!?



あとは太平洋戦争関係の本をこれでもかと読みました。
今までほとんど読まなかった架空戦記も何冊か読みました。

他にも読んだ本はありますが全ては覚えてません。
今年、本を読まなかった日はないのではというくらい読み、「ジャック・オーブリー」を筆頭に出会ってよかったと思える本もありました。


しかし出会った本の衝撃、という点では、去年読んだ須賀しのぶさんの「アンゲルゼ」に勝るものはなかったです。
今日、「アンゲルゼ」を一年振りに読み直してみましたが、記憶が衰えてるせいか初見の本のようにわくわくしながら読めました。帰りの電車を降りても二宮金次郎のように読み続けてそのまま一冊読んじゃった。

須賀さんの本は何冊も読みました。が、失礼な言い方ながら『アンゲルゼ』を超えるものはないんじゃないか。
それだけ『アンゲルゼ』は渾身の作品だったと思います。
一生のうちに一度でもあんな小説を書けたら。作家としてこれ以上の幸せはないでしょう。たとえその作品が作者自身にとってプレッシャーになろうとも。



蛇足ながら、この数年読んだ本にランキングをつけてみました。

4位 ジャック・オーブリーシリーズ
3位 ドン・キホーテ
2位 流れよ我が涙、と警官は言った
1位 アンゲルゼ


少し早いけど、来年も素敵な本に出会えますように。

思わぬ収穫

数年前(ちょうどAnAnにいそしんでた頃)自分は全くといっていいほど読書をしない人間でした。
(年に数冊レベル)

その反動か、最近はほぼ週一ペースで読みまくってます。
とうとう書棚の本をほぼ全制覇してしまいました。
近所の古本屋にあった目ぼしい本もあらかた物色済みで、遂には父の本棚まで漁り始めました。
(『大尉の娘』という本がおもしろかったです)

そうやって飢えをしのぐ私の元に、ネットで買いあさった段ボールいっぱいの本がようやく届けられました。
(本棚が絶望的に足りないことには目をつぶろう)

美味しいものは最後にとっておく派なので、一番どうでもいい本から読み始めました。
そうしたら、その本が大当たり。
「通勤時間のひまつぶしにでもなれば」
と思ってましたが、いやいやどうして。



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勅任艦長への航海(上)
パトリック・オブライアン著 高沢次郎訳 ハヤカワ文庫


本の内容を大雑把にいえば、ナポレオン戦争時代のイギリス海軍の船長の活躍を描いたフィクションで、いわゆる娯楽小説です。
なのですが、やたらと文章が上手い。
冒頭から始まる当時の軍艦内での生活の描写が実にこと細かく、まるで見てきたことのようにリアルで説得力があります。
圧巻は海戦のシーンで、古い言い方をすれば「手に汗握る」「血沸き肉踊る」。その興奮を文章だけで伝えてくれるその文才には、ただただ脱帽。このくらい文章が上手ければさぞ書いてて楽しいだろうと思えるほどです。
「艦これ」のような第二次大戦の頃とは全く違う、野蛮で凶暴でひたすら男臭くそしてかっこいい、そんな海の漢たちの戦いを、まるでその時代に連れて行かれたかのような臨場感で思う存分堪能できます。


それにしてもこれほどリアルな描写を書いたこの人は、いったいどの時代の人物なのか。
調べてみると、作者は1914年アイルランドに生まれ、その後英、仏に移住し2000年に亡くなっています。つまり書かれた時代の遥か後の人です。なのにこれほど迫真の描写ができるとは。
日本でいえば藤沢周平や山本一力といった大御所に匹敵する、歴史ものの大家なのでしょう。
と同時に、作者の育った地域には、日本などより遥かに濃い、帆船に対する憧憬が根付いているのだと思います。


私は子供の頃、イギリス人が書いた「アーサー・ランサム全集」という児童文学を読んでいました。子供たちだけで小さな帆船を操り冒険する話です。
それは平和な時代の話で海賊が出たり大砲を撃ったりはしません。けれど帆船やヨットの操縦や海での生活が驚くほどこと細かに書かれているのです。
私は上記の小説を読みながら、この児童文学の事を思い出していました。
イギリスやアイルランド(おそらくオランダあたりも)、そういった地域の人にとってヨットや帆船は日本の我々が考えるよりよほど一般的で人気のある娯楽なのでしょう。



オブライアン氏の筆の冴えはそこだけに止まりません。登場人物が実に魅力的なのです。
主人公のジャック・オーブリーは海の男としてはほぼ完全無欠で部下からすれば実に頼もしい人物ですが、一歩陸にあがれば借金取りにおびえ、ろくに日の目もおがめない男として描かれています。
その無二の親友であるマチュリンも、船医として頼もしいだけでなく多彩な知識人であり、同時に奇癖を持つ妙な男として描かれています。
二人を中心とした物語は当時の海軍のトップから場末のごろつきにいたるまで多彩な人物に彩られています。
そして娯楽小説でありながら、オブライアン氏の筆は時に人間の深みを巧みに描いているように思えます。まるで作者の人間としての深みが筆を通して滲み出たように。たとえ悪役を描いていても、そこには彼がそんな人間になるしかなかった哀しさが感じられる。
当時60近い作者の、優しく人間を見る目がそこには感じられるのです。

そこまで素晴らしい小説なのですが、要所で描かれるラブストーリー的な展開がもう「い~~っ!」となるくらいうっとうしい。
あれほど男らしいオーブリーが好きな女性の前では別人のように女々しくなり、愛し合う男女の気持ちは幾度となくすれ違う。陸にあがった時のこいつらの優柔不断さにはイライラして思わずページを読みとばしたくなります。
(たまに読みとばします)


そんなこんなはありますが、全体として上質の娯楽小説であることは間違いありません。
ひょっとしたらそれ以上の何かです。
このシリーズ、ハリウッドで映画になっているそうですが、見てみたいなあ。


最後に、訳者の方の素晴らしい仕事に感謝し、世界に埋もれた名作の数々を日本の読者に提供し続けてくれるハヤカワ文庫に感謝します。
(まさに「振り向けば『ハヤカワ』)
このシリーズまだまだ続きがあるそうなので、私が良書に困ることは当分ないでしょう。


真・今年出会った最高の本

以前このブログで言いました。
「今年読んだ一番面白い本は『ドン・キホーテ』です」と。
あれはウソです。
けど、嬉しいウソです。
それよりもっと素晴らしい本に出会えたから。

改めて紹介します。今年出会った最高の本はこれです。


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『アンゲルゼ』全4巻
須賀しのぶ 著  コバルト文庫

全く偶然の出会いでたまたまこの本の4巻目(最終巻)を手にとったことは以前書きました。
その日以来、この本について語りたくて仕方なかったのですが、改めて全巻揃えて読み終えるまで控えていました。
しかし読み終えた今、いざとなると何も言えません。この本の内容をなぞったところで、自分のこの本への思いは何一つ伝わらないでしょう。
しかし、全身全霊で書かれた本だけが持つオーラを、私はこの本に感じました。それも読み進めるほどはっきり、その気迫が伝わってきました。いつまでも読み続けていたい。たった4巻で終わるなんてあまりにもったいない、そんな本でした。

仮に私の本棚の収容力がたった百冊だったとして、この本は間違いなくその書棚に残るでしょう。たとえそれが五十冊でも。
もし十冊しか入らないとしたら(そんな本棚は捨てますがw)それでもやっぱり、この本は残ってると思います。


この本の魅力をどうにか伝えたいところですが、あいにく私の知る他のどんな話にも似ていません。
ただ『アンゲルゼ』全4巻を読み終えた時の気持ちは、『天空のエスカフローネ』全26話を見終えた時の気持ちに似ています。
ふたつの物語の共通点といえば、どちらも極上のラブストーリーで、登場人物のほぼ全員が魅力的だというくらいですが。

誰かの作品を他の人の作品に例えることは、却って作者に失礼にあたる事かもしれません。
けれど今の私にはこれより上手く伝えることはできません。
そしてこれは『アンゲルゼ』に捧げる、私のせいいっぱいの賛辞です。

永遠の君に誓う

本に対する自分の姿勢が変わってきました。
以前は少しでも気に入らない本は読まなかったのですが、性根を入れ換え、少しでも興味のある本は読むようにしています。
(まあ、悪い事じゃないと思う)

読書量は増えました。弟に借りたり古本屋で見つけたりネットで買ったりして。おととしあたりまでの読書量が年に3冊ほどだったのを考えると見違える成果です。
但しこのブログで取り上げていないのは、そこまで心に残る本がなかったからなのですが。

そんな中、この本に出会いました。


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『アンゲルゼ 永遠の君に誓う』
須賀しのぶ コバルト文庫

ネットを散策してた時、通りすがりのブログでこの本が熱烈紹介されていたのを記憶の隅で覚えていて、古本屋でたまたま見つけたので買いました。
(しかも最終巻)

何の期待もせず暇つぶしに読み始め、それまでのあらすじを知らない事もありただズルズルと読んでいたのですが、


そんなナメた読み方してごめんなさい

魅力に気づくのに相当時間がかかりました。が、終盤に差しかかる頃にはかぶりつくように読んでました。
(そして読み終えてすぐ2周目に突入)


シュミか? と訊かれたら、全然シュミじゃないです。
こんな暗くて残酷な話、自分は何で読んでるんだろう。
なんで作者はこんな話を書けるんだろう。
けれど優れた文章表現力が、そして悲惨な境遇を懸命に生きる主人公たちへの共感が、この本を手放すことを許してくれません。


細かい感想を書きたいのは山々ですが、今は読了直後で完全に打ちのめされ言葉がありません。
(必ず全巻買って読み直します)

「最高に素晴らしい作品」とも思えるし「一体誰のために書かれた本なのだろう」とも思うし「なんでもっと評価されないんだろう」とも思える不思議な本です。
そして「永遠の君に誓う」という副題はこの本にぴったりだと思います。
いっけん安っぽいラブストーリーを思わせる副題だけど、主人公たちの真っ直ぐで切ない愛を表現するのにこれほど似合う言葉はないと思います。

切なくて、残酷で、儚くて、それでいて癒されて、けれどやっぱり切ない本です。
プロフィール

雪山雪男

Author:雪山雪男
「艦これ」大好きな元「Answer×Answer」プレイヤー。
老眼と戦いながらプラモ作りに励んだり、気まぐれで小説を書いたりする日々です。

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