『火星の人』

今の会社に行くようになってから、昼休みに淡々と読書をしています。
他に娯楽もないのが幸いしています。
歴史小説、戦記もの、ラノベ、ラブストーリー、etc…
基本的にジャンルは問いません。
が、敢えて好きなジャンルを挙げるならSFでしょうか。
今はこんな本を読み終えたところです。



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『火星の人』
アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 ハヤカワ文庫

弟に勧められて読みました。
弟も私もSF好きという点では同じですが、好みは少々違います。
弟はスペースオペラのような、宇宙を舞台にした知的で壮大な冒険活劇が好みだとみました。
いっぽうの私は内省的な、地味な話が好みです。
なのでこの本も期待してはいませんでした。
案の定、読み始めて3行ほどで、
(駄目だ。自分には向いてない)
と思いました。

ひょっとしてネタバレになるかもしれないので、そういう人のため、先に私の結論だけ言わせてもらいます。
私はこの500ページあまりの大作を読破できました。
この小説は映画化され、ちょうど公開された頃だと思います。わざわざ映画館に足を運ぶつもりはありませんが、誰かが誘ってくれたら喜んで行こうと思います。




これは私が今まで出会わなかったタイプのSFです。
いや正確に言うと、むしろしょっちゅう出会うタイプの本です。
読み始めて3行で「ああ、駄目だ」と首を振り本を閉じ二度と開く事はない、そういう沢山の本のひとつです。
唯一の違いは、そう思いつつも読み続けられたこと。
その理由は、せっかく弟が勧めてくれた事、なんだかんだで宇宙の話が好きだからという事。
そして何より、この作者の半端じゃない頑張りに対する興味です。

私の考える、私の好きな、理想のSF。
それは想像力豊かで余人には思いつきもしないアイデアを次から次へと繰り出す玉手箱のようなもの。当然書ける人は限られます。
この本はそれとは真逆。乱暴に言えば「誰にでも書ける」本です。
但し人並み外れた膨大な知識があれば、です。
手持ちの知識を総動員して、

「人がこういう状況になったら、こうして、こうして、こうなる」

この本は壮大なシミュレーターそのものといっていいでしょう。
そういうものを私はSFと呼びたくありません。
ですがこれを書いた作者の並外れた粘り、執念に近いこだわりには敬服しました。
小説家としてのセンスは感じられない代わりに、溢れる専門知識とコンピュータのような予測能力をその頭脳に詰め込んだ人物なのでしょう。
少々あきれつつも「凄い」と言わざるをえない。


小説としては不満だらけです。
生き残りをかけた試練が次々と彼を襲うのですが、なんというか、読んでて「あ、これはギリギリ助かるな」と思えてしまう。例えるならば市町村が行う防災訓練みたい。あまりに無理すぎて絶対助かりっこない、なんてシナリオは最初から排除されている。
それでは小説としての盛り上がりに欠けると思うのは古くさい考えでしょうか。
いや、状況はどうであれそれを徹底的にリアルに描けば説得力も生まれるでしょう。が、一見リアリズムに徹しているこの小説で少なくともひとつ、リアルでないものがある。
それは主人公の心理描写。
主人公は自分の置かれた悲惨な状況の中であまりに楽天的すぎます。

私が小説に唯一求めるものはリアルな心理描写だけです。
あとはむしろ嘘や出まかせにまみれていたって構わない。むしろ嘘を楽しむのが小説だとさえ思ってる。上手い嘘をついて読者を楽しませてくれるのが優れた小説家だと思っている。
そういう意味ではこの本は優れたSFでないどころか、優れた小説でもない。少なくとも自分が小説に抱いている美学とは180°離れたところにある。

それなのに最後まで読ませてくれた。
これがこの小説に対する、私の最大限の賛辞です。



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専門用語が多く飛び交う小説ですが、弟がこんな簡易的な絵解き解説をしおり代わりに挟んでおいてくれたので、そういう意味でも楽しく読めました。


あと、本の内容とは関係ないのですが…



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単行本の表紙の左上に、逆さになった宇宙飛行士(おそらく主人公)が映っているのですが、私はこれがとても怖かった!
というのも私の目には何故かこれが、

「スペクトルマンみたいな顔をした上半身だけの宇宙人が背中から蒸気を吹き上げながら迫りくる」

ように見えてしまったのです。



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ページをめくる度、「この火星人はいつ襲来するのだろう」とビクビクしてました。
(100ページくらい読んで、ようやくだまし絵にだまされてた事に気づいた)

「奇想天外な発想」
という点だけでいえば、私にもSFの才能ありそうです!?



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プロフィール

雪山雪男

Author:雪山雪男
「艦これ」大好きな元「Answer×Answer」プレイヤー。
老眼と戦いながらプラモ作りに励んだり、気まぐれで小説を書いたりする日々です。

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