「まほろさんファースト」(2)

『まほろまてぃっく』の書きかけ小説の続きです。
前回から間が空いてしまってすみません。




「……それが、司令と私の不幸なファースト・コンタクトでした」
「あはははは」

 かき氷をしゃくる手を休めてため息をつく私に、椎名さんが声をたてて笑う。

 恵比寿の地下にあるヴェスパーの秘密基地。そこから徒歩5分のところに甘味処「蜂の一刺し」はあった。
 小じゃれた店内はメイド服を着たウェイトレスさんの笑顔にあふれ、お値段もお手頃でお味は抜群。そこは当然のようにヴェスパー女子部の溜まり場となっていた。
 私も午後の訓練がある日には、学校帰りの椎名さんとここで待ち合わせるのが常だった。

「まあ、いかにもまほろらしいというか司令らしいというか」
「あ、でも今の話は誰にも」
「わかってる、わかってるって」
「告げ口とか、そういうわけでは。ただ心のつかえを聞いてほしくて」

 はた目にはOL風の私と学生服の椎名さん。いっけん私の方がお姉さんに見えるけど。けれど常識を知らない私にとって、椎名さんはいつだって頼もしい先輩だった。

「まほろがそういう事に耐性がないのも無理ないわね。よく考えたら、あなたまだ1歳だもの」
「私はまだ0歳と5ヶ月です」

 椎名さんと私の会話にウェイトレスさんが目を丸くする。

「あ、みたらし団子追加ね」
「私もお願いします」

 ウェイトレスさんは私たちの食欲にもう一度目を丸くして厨房に消えた。

「とにかく、まほろは潔癖性というか、完璧主義者すぎるのよ」
「自分が完璧だなどとは思ってませんが、そうありたいと常日頃思ってます」
「それはそれで、まほろらしくていいけど…… ん~!」

 椎名さんはそう言って宇治金時をシャクシャク、キーンして至福の表情を浮かべる。

「けど、周りがみんなそんなだったら、ちょっと息苦しいでしょ?」
「そんなものでしょうか」
「私は好きだけどな、美里司令。ざっくばらんで」
「その…… エッチな本を隠し持つような方でも?」
「まほろ」

 お姉さんぶった顔で椎名さんが言う。

「仕方ないのよ。男の人なんてみんなそんなものなの。まだ1歳のまほろにはわからないだろうけど」
「0歳と5か月です」
「本当のどスケベっていうのはね……」

 その時、椎名さんのポケベルが鳴った。
 液晶の表示を一瞥して、椎名さんが苦虫を噛みつぶしたような顔をする。

「噂をすれば。どスケベがお呼びだわ」
「どなたの事です?」
「首領様」

 椎名さんは女子高生と私の教育係の他、首領様の秘書見習いも掛け持ちしてるのだ。
 それにしても首領様の事をそんな悪しざまに言うなんて……
 まさか椎名さん、首領様に私がレクチャーされてないようないかがわしいあんな事やそんな事を!?

「椎名さん!」
「んあ?」
「何か危険な事があったら、迷わず私を呼んで下さいね」

 私は立ち上がり、キリッとファイティングポーズを取った。

「相手が誰であれ、椎名さんは私が必ずお守りします。たとえ相手が首領様でも」
「ありがと」

 そんな私を、椎名さんは頼もしげに見て頷く。

「でも大丈夫、自分の身は自分で守るから」

 椎名さんはブレザーの裏に忍ばせた苦無をチラ見せする。
 さすがは椎名さんです。でも、一体その苦無で首領様に何をするつもりなのか……
 などと思ってるうち、私のポケベルも鳴り出した。

「こっちは郡司さんからです」
「忙しくなってきたわね」

 椎名さんは声を潜めてつぶやいた。

「そろそろ…… 実戦が近いのかも」

 私は黙って頷いた。
 戦闘用アンドロイドとして作られ、けれどいまだ実戦経験のない私。
 本当に私は、皆さんのお役に立てるでしょうか。
 そんな不安を払拭するには、そう、訓練あるのみです。

「よおし。じゃ、訓練を兼ねて本部まで競争よ」

 宇治金時とみたらし団子を難なく完食した椎名さんがレシートを取り上げた。

「まほろ」
「はい」
「司令のいいところはね」

 立ち上がった椎名さんは私を見つめて言った。

「今にわかるわ。まほろにもきっと」
「そうでしょうか」
「あなたが、一番分かってあげなきゃね」

 そう言って椎名さんは私に寄り添い、ぎゅっと手を握った。
 私が司令の事を…… なぜ私なのでしょうか?
 私が疑問を投げかけるその前に、

「じゃ、そ~ゆ~ことで。ごちそーさま~っ!」

 椎名さんは元気に手を振り駆けて行く。
 私の手にいつの間にかレシートが握らされている事実に気づいた時、椎名さんは遙か彼方に脱兎の如く走り去っていた。

(続く)




前回から一カ月も経ってしまいましたが、「月に一度書く」という事ではなく週一くらいで書くつもりではいます。
すみません。頑張ります。

あと、椎名さんの若い頃を勝手に想像して書きましたが「椎名さんってこんなキャラだっけ?」とか言われたら身も蓋もありませんすみません。

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雪山雪男

Author:雪山雪男
「艦これ」大好きな元「Answer×Answer」プレイヤー。
老眼と戦いながらプラモ作りに励んだり、気まぐれで小説を書いたりする日々です。

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