映画にう・つ・つ

去年の暮れに、
「これからは映画見るぞ」
と映画館の会員カードを作りました。
そのカード、一度も使ってません。
TOHOの会員になったつもりが、なぜか別の映画館の会員になってたようで。
(なんばTOHOの券売機にこのカードをねじ込んで恥をかきました)
そんな事もあり、今まで通り映画館とは無縁の生活を送ってます。

今日は最近見た3本の映画を語りますが、見たといってもレンタルしたものです。



・『マスター・アンド・コマンダー』2003年

最近私がはまっている小説「ジャック・オーブリー」シリーズをハリウッドが映画化した作品です。
期待半分、不安半分で見ましたが見始めてすぐ、

「くっそつまらん」

原作に砂糖と脱脂粉乳を混ぜて水で50倍に薄めたのかという感じ。
あの名作のどこをどうこねくり回せばこうなるんだと言いたくなる、そんな映画。
長編の原作のエッセンスをつまみ食いする懐石料理のような映画にするつもりが、メリハリを知らぬスタッフが原作のエピソードをまんべんなく盛り込もうとした結果出来た、ただの平べったい映画。
そんな感想しか抱けず、とてもじゃないけど最後まで見れませんでした。

でもブログに感想を書くのに最後まで見ないのもなあ… と、先日カレーを作りながら再視聴。
途中からなぜか両親も一緒になって見ました。
(一緒にわいわい言いながら見ると、同じ映画でも面白く感じますね)

改めて見直すと、最初に思っていたよりはきちんと作られている映画だと思い直しました。なによりセットとなる船(サプライズ号)が本物の帆船を使ってリアルに描かれているのがいいです。
しかしこの映画を見た人が「よし原作も読んでみよう」という気になるかというと、うーん。
話が地味で、観客に訴える力が弱い気がします。
そこは原作も派手な戦闘シーンばかりではなく日常の平凡な生活の描写も多く、むしろそのあたりのリアルな描写が魅力ではあるのですが。
でも原作の一番の魅力は、何といってもジャック・オーブリーとスティーブン・マチュリン、二人の主人公そのもの。
単なる有能な艦長、有能な船医で終わらない魅力を持った二人。この二人に焦点を絞りこの二人を描ききれば「そこそこの良作」で終わらなかったと思うのですが。
とはいえ卓越した作家の筆の冴えをスクリーンに再現できる監督などそうそういないでしょう。そう思えば、まずまずよく出来た映画なのでしょう。
ま、結論としては
「しょせんハリウッド映画」ということで。



・『ブレードランナー』1982年

最初に『マスター・アンド・コマンダー』をあれだけ酷評してしまったのは、きっとその前に『ブレードランナー』を見てしまったからでしょう。
この傑作SFに比べたら、大抵の映画は色褪せて見えてしまいます。
いい映画ですね『ブレードランナー』。
久しぶりに見ましたが、いいものはいい。

この映画についていちいち紹介するつもりはありません。映画ファン、SFファンなら見ているのが前提の映画なので、あくまでも今回見て改めて気づいた事を重箱の隅をつつくように語るだけです。



・うどん

「フォー、フォー」
「ふたつでじゅうぶんですよ」
冒頭の有名なシーンですが、それより気になったのがその後のシーン。
警察のエアカーに乗せられたデッカード、助手席でうどんを食べてます。
むしろこのシーンのほうがつっこみどころ満載かと。

「絶対車酔いしそう」
「間違いなく汁がこぼれる」
「私が運転手なら絶対「やめて~」って言う」

運転してるガフはいかにも綺麗好きなので絶対嫌がると思うんですが。
それとも未来のうどんはこぼれないように出来てるんでしょうか。だとしたら素晴らしい技術です。
未来といってもたった2年後ですが。頑張れ日清。


・張り込み
踊り子のゾーラを怪しいとにらんだデッカード、廊下の隅で新聞を読むふりをしながら見張っていますが、今のご時世そんな事をしてたら目立って仕方ありません。
時代を超えた名作とはいえ、そこらに時代を感じます。


・タバコ
レイチェルがタバコを吸いまくってますが、自作派としての経験から言わせてもらえば喫煙者のパソコンは最悪です。内部はヤニで真っ黒け、メンテナンスする気も失せます。
おそらくレイチェルも定期検診の際には担当者に「うっ」とハンカチで口を押さえられることでしょう。
タイレル社長、今からでも彼女に禁煙を勧めてください。タバコ、よくない。


・エロい
デッカードとレイチェルのキスシーン、とんでもなくエロいっす。なんつーかデッカードの高圧的な態度が。


・チェス
センスの固まりのようなこの映画ですが、一番うならされるのは、ロイがタイレルに会うための口実として考えたこのチェスのシーン。何度見ても「センスいいなあ」と思います。
ネクサス6型の知性。冷血に見えるタイレルの人間臭さ。止まったエレベーターの中、ロイの傍らで成り行きを見守るしかないセバスチャン。
三人三様の思いが描写されるこのシーン、もう全てが素晴らしい。


・ロイの最後のセリフ
名シーン、名セリフがオンパレードなこの映画の中でも一番印象的なのは、やはり最大の敵ロイが死ぬ間際デッカードに語りかけるあのシーンでしょう。
それには同意しつつ、あのセリフの中身にはどうも納得できない。
「オリオンのうんたら、アンタレスのどうたら」
ロマンチックではありますが、実際に宇宙旅行した者のセリフとしてリアリティに乏しい。
「オリオン座」とは地球からの方角を示す言葉にすぎず、星座を構成する星々は互いにとんでもなく離れている。それにロイが語る星々は地球から何百、何千光年と離れていて、とても4年の寿命の者が行って帰ってこられる距離じゃない。
要するにロイの言葉にはリアリティがなく、原作者のファンとして言えばディック作品らしくない。
このセリフはロイ役のルドガー・ハウアーが半ば即興的に考えたらしいですが、ここだけがSF考察的にお粗末なのもそう考えれば納得できます。
とはいえ私はこのセリフを批判するつもりはありません。そういうちぐはぐさも含め、これが『ブレードランナー』という映画であり、私はこの映画がこよなく好きです。



私は原作の小説もこの映画もどちらも好きですが、実は両者は似てません。デッカードは原作では妻帯者でハゲで中年のおっさんだし、へび使いは原作ではソプラノ歌手だし、タイレル博士は序盤に出てくるだけだし、セバスチャンは… というふうにむしろ原作と映画の共通点を探すほうが難しい。
原作でクローズアップされているのはアンドロイドそのものよりも、人間の「他の生命体への共感」です。
(映画にも出てくる「フォークト・カンプフ検査法」はアンドロイドと人間の他生命への同情や共感の違いを利用している)
そして原作の世界観の大きな軸の一つである「マーサー教」についても原作はばっさりカットしている。
むしろ映画は原作を叩き台にして新たな世界観を作っている。にも関わらず『ブレードランナー』は原作のディック的な本質をとらえている。それがこの頃のリドリー・スコットの凄み、腕の冴えだと思います。


『ブレードランナー』は不遇のSF作家ディックの作品の最初の映画化でした。
(ディック本人は本作の上映直前に永眠)
そして死後彼の名声が高まるにつれ雨後の竹の子のように彼の作品は次々と映画化されていきます。
しかしどれひとつとしてディックの志を映像に出来たものはなく、ましてどれひとつとして『ブレードランナー』の足元にも及ばない。
ディックはこの映画の制作に立ち会い、それが自分の原作とまるで違うことを知りつつもこの映画をほめた。それはこの映画が本質では彼の小説の描く世界観と同質のものであると感じたからでしょう。それは監督がこの原作を、ディックの作家としての本質を深い次元で理解していたからだと思います。
1980年代というSFが最後の輝きを放っていた時期に、優れたSF作家と優れた映画監督が作り上げた『ブレードランナー』。
まさに傑作という言葉がふさわしい映画だと思います。
SFというジャンルに再び光が当たる日まで、これを超えるSF映画は作られない気がします。
それはそれとして、もしも生きてる間にエアカーに乗れたら助手席でうどんを食べたいと思います。



・『マッドマックス・怒りのデス・ロード』2015年

一緒に借りた『ブレードランナー』はガチの安牌。
『マスター・アンド・コマンダー』は正直最初から期待せず。
なので、今回借りた3本の中で一番期待してたのはこの『マッドマックス』最新作でした。
いやあ、期待通り、いやそれ以上でした。
比較的最近の作品なのでまだ見てない人もいるでしょうが、私は非常に、非常に楽しめました!!
これを見た後でも『マッドマックス』(1作目)は楽しめるでしょうが、これ見た後だと『マッドマックス2』のほうはもう見れない、そんな気がします。
この映画を見て私も久々に車を運転したくなりました。
V8! V8!


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雪山雪男

Author:雪山雪男
「艦これ」大好きな元「Answer×Answer」プレイヤー。
老眼と戦いながらプラモ作りに励んだり、気まぐれで小説を書いたりする日々です。

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